バンビ「片思いって辛いんですね......」
紺 野「相談ならいくらでも乗るけど、
残念ながら、気持ちの肩代わりはできないな。」
バンビ「ううん、十分です。話聞いてもらえるだけで。」
紺 野「でも、僕は君のことが羨ましいよ。」
バンビ「え、どうしてですか?」
紺 野「青春だなあって思うから。」
バンビ「紺野先輩......」
紺 野「......いい、わかってる。
オヤジくさいって言うんだろ。よく言われる。」
バンビ「片思いって辛いんですね......」
紺 野「相談ならいくらでも乗るけど、
残念ながら、気持ちの肩代わりはできないな。」
バンビ「ううん、十分です。話聞いてもらえるだけで。」
紺 野「でも、僕は君のことが羨ましいよ。」
バンビ「え、どうしてですか?」
紺 野「青春だなあって思うから。」
バンビ「紺野先輩......」
紺 野「......いい、わかってる。
オヤジくさいって言うんだろ。よく言われる。」
バンビ「わたし、もっと女の子らしくしたほうがいいんでしょうか。」
紺 野「どうして?今のままで十分女の子らしいと思うけど。」
バンビ「ホントですか? 例えば......」
紺 野「うん、例えば......、
..................」
バンビ「?」
紺 野「どう引っくり返っても男の子には見えない。
大丈夫、女の子らしいよ!」
バンビ「もう、紺野先輩!」
バンビ「男の人が女の人にドキドキするのってどんな時ですか?」
紺 野「目が合った時かな。」
バンビ「目......」
紺 野「うん。その上ニッコリ笑われたら、ますますドキッとする。」
紺 野「何か用事を忘れてるんじゃないかとか......
脅迫観念っていうのかな。」
バンビ「(......ドキドキの意味が違うみたい)」
バンビ「どんな女の子が好かれると思います?」
紺 野「僕なら、一緒にいてホッとする子がいいかな。
肩肘張らずにいられる。」
紺 野「似た価値観を持ってるていうか、波長が合うっていうのかな。」
バンビ「なるほど。」
紺 野「結局、好きになった人がその人の好みになるかもしれない。」
紺 野「......月並みな回答になっちゃったけど。」
バンビ「ふふ、参考になります。」
バンビ「男の人って、いつも何を考えてるんですか?」
紺 野「女の人って、いつも何を考えてるんだろう?」
バンビ「えっ?」
紺 野「はは、ごめん。僕も同じようなこと考えるから。」
紺 野「本当に何を考えてるんだろうな。 男も、女も。」
バンビ「(......聞き返されちゃった)」
バンビ「もうすぐ体育祭ですけど、紺野先輩は何か準備してます?」
紺 野「個人的にはしてないけど、生徒会執行部的にはしてるよ。」
紺 野「種目の見直しとか、安全面への配慮とか、
いろいろ話し合わなきゃならないから。」
バンビ「そうなんだ。毎年同じ繰り返しだと思ってました。」
紺 野「うん、実際にはほとんど変化なんてないんだ。」
紺 野「でも、体育祭の初めにやる宣誓があるだろ?
あれはなくしたいんだけど、無理だろうな......」
バンビ「なくしたいんですか?」
紺 野「せめて生徒会長がやらなくてもいいと思わないか?
もっとふさわしい人がいると思うんだ。」
紺 野「『宣誓! 我々はー!』
なんて、僕の柄じゃないと思うのに......
......はぁ。」
バンビ「紺野先輩。」
紺 野「○○さん。」
バンビ「ふふ、いいもの持ってきましたよ?」
紺 野「へぇ?なんだろう。」
バンビ「はい、これ。修学旅行のお土産です。」
紺 野「えっ、僕に? なんだか悪いな。」
バンビ「いいから開けてみてください♡」
紺 野「うん、どうもありがとう。
..................」
紺 野「本場味噌ラーメンセットか、美味しそうだな!」
バンビ「..................」
紺 野「......ん?泣きそうな顔してるかど、どうかした?」
バンビ「思い出しちゃった......
北海道、紺野先輩と一緒に回りたかったなって。」
紺 野「え?」
バンビ「修学旅行、紺野先輩がいないのが寂しくて......」
紺 野「そ、そうか。行けなくてごめん。」
バンビ「......ふふ、紺野先輩のせいじゃないですよ?」
紺 野「はは、なんとなく......」
紺 野「あ、そうだ! おかえり。
まだ言ってなかったよな?」
バンビ「はい。 ただいま、紺野先輩♡」
紺 野「○○さん、お疲れ様。」
バンビ「あ、紺野先輩。お疲れ様です。」
紺 野「ギリギリだったな。間に合ってよかった。」
バンビ「手伝ってもらっちゃってすみません。
紺野先輩も忙しいのに......」
紺 野「はは、困った時の文化祭運営委員だから。
遠慮なくこき使ってくれ。」
バンビ「ふふ......」
放 送「これより、はばたき学園 学園演劇を開演いたします。」
紺 野「......始まるな。
何が起こるかわからないし、気は抜けないぞ。」
バンビ「はい!」
(..................)
紺 野「この場面終わったら、背景チェンジだ。暗転と同時に走るぞ。」
バンビ「はいっ。」
王 子「姫様、オレは帰るよ。アンタの知らない世界へ。
こんな馬鹿げた暮らしはもう御免だ。」
姫 「ダメよ。 王子が行くなら、わたしもついて行くわ。」
王 子「みんながオレを見てるようで本当は誰も見ていない。
王子なんてただの飾りなんだな......」
紺 野「......重いな。」
バンビ「えっ?」
紺 野「あっ、いや、今の王子のセリフが胸に刺さるというか......」
紺 野「はは、何言ってるんだろうな。感情移入しすぎだ。」
バンビ「紺野先輩......?」
姫 「わたしはあなたを見てるわ!」
姫 「あなたはいつも笑顔の裏で悲しんで、苦しんで......
そうして耐え続けていることをわたしは知っているわ。」
紺 野「..................」
バンビ「紺野先輩、もうすぐですよ。」
紺 野「..................」
バンビ「(舞台に見入ってる。大丈夫かな......)」
紺 野「......えっ?」
バンビ「紺野先輩、急いで!」
紺 野「あ、ああ。」
紺 野「うわっ!」
バンビ「(..................
こんなときにボーッとするなんて、らしくないなぁ。)」
バンビ「もうすぐ夏休みですね。
紺野先輩はなにか予定あるんですか?」
紺 野「塾の夏期講習以外だと、近所の子の家庭教師かな。
今もやってるんだけど。」
バンビ「わぁ、勉強の予定ばっかりですね。」
紺 野「そうでもないよ。 小学校に入ったばかりの子で、
勉強といってもクイズみたいなものだから。」
紺 野「母が是非にって頼まれちゃったらしいんだ。
近所づきあいで断れなかったんだろうな。」
バンビ「なるほど......」
紺 野「家庭教師はいいんだけど、
帰る前にいつもお母さんに引き留められちゃって。」
紺 野「おしゃべりがちょっと長いんだ。それのほうが大変かな......」
バンビ「(紺野先輩らしい......)」
バンビ「たまちゃん。」
紺 野「わっ...... どうかした?」
バンビ「わたし、今日は帰りたくないなぁ。」
紺 野「ええっ!?」
バンビ「たまちゃんと一緒にいると
すごく楽しいんですもん。 ね?」
紺 野「だ、駄目だよ。家族もいるんだし......」
バンビ「ふふ、いるから言ってるんですよ?」
紺 野「そうか、そうだよな!
何を言ってるんだ僕は......」
バンビ「じゃあ、このまま紺野家の子になっちゃおっと。」
紺 野「えっ、それは駄目。僕の妹ってことだろ? それじゃ......」
バンビ「......それじゃ?」
紺 野「......とにかく駄目。そういうのは今度。」
バンビ「お兄ちゃん♡」
紺 野「..................」
紺 野「......はっ! 駄目ったら駄目!」
バンビ「ふふっ♡」
バンビ「ふふ♡」
紺 野「ん?どうかした?」
バンビ「この部屋、紺野先輩のにおいがします。」
紺 野「えっ......そ、そう?」
バンビ「はい♡」
紺 野「はは......まあ、ゆっくりしていって。 のどは渇かない?」
バンビ「ううん、大丈夫です。」
紺 野「お腹は......」
バンビ「何もいりません。紺野先輩さえいてくれたら、それで......」
紺 野「えっ......」
バンビ「..................」
紺 野「ま、まいったな......」
バンビ「紺野先輩も座ってください。さっきから立ちっぱなし。」
紺 野「なんとなく落ち着かなくてさ。
君がいるだけで自分の部屋じゃなくなったみたいで......」
バンビ「ちゃんと紺野先輩に部屋ですよ?」
紺 野「そうか。 じゃあ、座るぞ!」
バンビ「ふふ、紺野先輩ったら♡」
バンビ「すみません、わざわざ送ってもらっちゃって......」
紺 野「うん、まぁ、僕の都合でもあるし。」
バンビ「?」
紺 野「なかなか渡すタイミングがつかめなくてさ。
その...... これ、誕生日のプレゼント。」
バンビ「わぁ、覚えててくれたんですね!」
紺 野「もちろん。誕生日を知ったときからずっと覚えてた。」
バンビ「ふふ、変なの。」
紺 野「はは。 とりあえず、タイミングを失わずに済んでよかった。」
紺 野「誕生日おめでとう。 それじゃ。」
バンビ「紺野先輩、もうすぐ卒業しちゃうんですね。」
紺 野「あっという間だったな......」
バンビ「早かったですか?」
紺 野「振り返ってみるとね。
君と会ってから、ますます早くなった気がする。」
バンビ「え、どうして?」
紺 野「楽しい時間が増えたからかな。
君は僕を笑わせるのがうまいから。」
紺 野「こんな風に一緒に帰るのも、あと少しなんだな......」
バンビ「(......うう、卒業式前に泣いちゃいそう)」
紺 野「もうすぐ修学旅行だったよね?」
バンビ「はい。」
紺 野「懐かしいな。もうあれから一年経つのか......」
バンビ「紺野先輩の時はどうでした?」
紺 野「楽しかったよ。
どこへ行くにも混んでて、予定通りに回れなかったけど。」
バンビ「修学旅行シーズンですもんね。」
紺 野「そう。問題はいろんな高校の生徒がいるってことなんだ。」
紺 野「君の学年には特に目立つのがいるからね。」
バンビ「うっ......」
紺 野「彼らに伝えておいてくれ。
僕の目がないからってやんちゃな行いは慎むように。」
バンビ「それてなく言っておきます......」